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ういろう・外郎博物館



 
1、小田原へ
 
 所要で神奈川県へ行った折、「ういろう・外郎博物館」へ寄ってみることにしました。小田原駅前から南へ伸びるお堀端通りを進むと、旧・東海道の国道1号線に突き当たります。右折してすぐ、城郭風の一際目立つ建物が見えてきます。これが、鰍、いろうです。





 
2、ういろうの八棟造り
 
 外郎家が京より招かれ、大永3年(1523)にこの場所に建てられたのが、三階建ての八棟造りと呼ばれる建物でした。寛永地震(1633年)で倒壊、さらに天明地震(1782年)の倒壊後には、資材不足より二階建てになってしました。これらの様子は江戸期の錦絵などで確認することができます。

 大正2年(1913)の関東大震災で再び倒壊。そして、室町期の八棟造りを再現したのが、現在の鰍、いろうの社屋といことになります。

 さて、玄関を入ると正面に和菓子売り場のカウンター、右が喫茶部、左が薬局という、やや風変わりな組み合わせ。どこも観光客で混雑しています。ここでしか購入できないという、薬の「ういろう」とお菓子の「ういろう」、さらに記念に印籠も購入。また、ういろう関連グッズとして「外郎売りの土人形」(3,000円)と「外郎売りのイラスト入り、湯のみ」(550円)もありました。





 
3、外郎博物館
 
 薬局カウンターで、外郎博物館に入館したい旨を伝えると、博物館案内を担当されている男性社員の方がいらっしゃいました。場所は薬局の横の通路を過ぎて、一旦、建物を出たところ。社屋の左奥に残されている土蔵です。関東大震災では多くの建物が崩壊しましたが、明治18年(1885)築のこの土蔵だけは崩壊から免れたとのことです。平成17年(2005)に、この土蔵を利用して外郎博物館が開設されています。

 鍵を開けていただいて中へ。1階は、外郎家に伝わる品々の展示。薬を製造する器具や看板など歴史を感じさせるものばかり。お菓子の「ういろう」関係では、明治期になって一般に販売されるようになったときに使用された掛け紙というか、外装紙に目が行きました。当時は、「ういろう羊羹」あるいは「ういろうおこし」と呼ばれていたようです。

 担当の方に確認したのが、小田原方言における「透頂香」と「ういろう」のアクセント。前者は、トーチ]ンコー。後者は、ウイロ]ーとのことでした。近畿や徳島、東海では短音化して、ウイロと変化していますが、小田原では山口と同様、原音のウイローが保存されているようです(この件に関しては別項で考察予定)。

 そして、2階は広い空間が開けていて、京都の祇園祭りの山車、「蟷螂山(とーろーやま)」についての展示がされています。四条隆資の死後25年に当たる永和2年(1376)、外郎家の陳大年が、四条家の御所車に蟷螂を乗せたのが蟷螂山の始まりとされています。四条隆資の戦い振りが蟷螂に似ていたのが、蟷螂を乗せた理由のようです。元治の兵火で焼失したけれど、昭和56年、117年ぶりに再興されたとのこと。現在になって、小田原の外郎家と祇園祭の交流が再開されたとのことでした。





 
4、透頂香
 
 薬の「ういろう」・透頂香は、小田原の当店でしか購入できないもので、通信販売は一切不可。原材料である、天然の動植物の入手が困難となってきているため、多くを製造販売することが難しくなってきているのがその理由です。

 入り数により、1箱が千円から5千円まで。141粒入りの千円のものを購入してみました。裏面の効能書きには、腹痛・下痢に始まり、声の嗄れ、発声適度、咽喉痛、咳、痰など34あまり。大人一回に10〜20粒の服用とあります。

 形状は、”仁丹”をちょっと大きめにしたもの。味も”仁丹”によく似ていましょうか。ちょっと苦くて、清涼感があります。

 薬と並んで販売されているのが印籠。こちらも記念に購入。色は、赤・グレー・ピンク・黒の4種類。表が桐の紋章、裏が「ういろう」のロゴ文字となっていtます。中には、印籠の使用方法の解説書も。






 
5、ういろう駅前調剤薬局

 
 小田原城を訪問したあと、小田原駅前商店街を散策。駅からすぐのところで見つけたのが「ういろう駅前調剤薬局。お馴染みの「ういろう」のロゴ文字。そして、こちらも薬と和菓子という、変わった組み合わせの看板が並んで掲げられています。

 3年前に小田原を訪問した際は、駅前地下街「アーミーおだちか」の鰍、いろうの販売店で、お菓子のういろうを購入しました。ところがこの地下街、訪れた日の17日後である平成19年6月30日をもって閉鎖。もう小田原駅前でういろうは購入できないのかと思っていましたが、地下街販売店に代わって新たに設けられたのが、この薬局のようです。

 薬局に和菓子に喫茶部と、本店と同じく風変わりな構成。こちらも、外郎家の歴史を具現化しているといえましょうか。なお、小田原駅構内の土産物販売店においても、お菓子の「ういろう」が販売されていました。小田原訪問の際は、名物「かまぼこ」だけでなく、お菓子の「ういろう」もお忘れなく。