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1.2 三河の「ういろう」 


 「ういろう」で有名な名古屋(尾張)の東側が、愛知県東部・三河です。徳島県から、近畿・東海へと続く、日本列島の中央部に位置する「ういろう文化圏。その東端に位置するのが、三河です。

 実は、三河はまだ未調査の地点が多く、あまりよくわかっていないというのが現状。訪問した「ういろう」店は5軒、他に岡崎や安城にあることがわかっています。サンプル数が少なくて詳細な点は不明ですが、現在分かっている段階での報告となります。

 三河ういろの状況も名古屋と同様、竿ものと三角ういろがあります。尾張と異なるのは、三角ういろが小麦粉素材ではなく、米粉素材である点。記号としては、B1類ということになります。100gの単価が132〜133円と、名古屋ういろの竿もの・米粉[A1類]の112円、三角・小麦の86円と比較しても、高級品であるといえましょう。


両口屋、竿もの・米粉  穂積堂 三角・米粉


 これらのオーソドックスな「ういろう」の中で、ひと際目立っているのが、豊橋の「餅昌」。徳島から東海へと続く「ういろう文化圏」の中にあって、明治期から続く老舗の「ういろう」店としては、最東端に位置しています。


 形状は、一口サイズの直方体、といっても175gの大型サイズ。特筆する点は、米粉と小麦粉の混合であること。記号化すると、[C12]ということになるんでしょうか。

 京都府や滋賀県では混合ういろうはよく見ますが、岐阜県以東ではこの餅昌だけと思われます。粘りは米粉ういろ、香りや食感は小麦粉ういろと、両者のいいとこ取りのような「ういろう」です。製造方法は100年前と変わらないといいますから、三河ういろの特徴を知る上でも貴重ではないかと思われます。

 なお、お店の方の情報によると、静岡県の浜松で「ういろう」と言えばお土産で売っている大手メーカーの「ういろう」しか周知されていなくて、当然「ういろう」店もないそうです。

 「ういろう文化圏」が、これ以上東へと浸透しなかったのは、静岡県以東には「ういろう」に似た「すあま」が、そして奥三河・東美濃には「からすみ」が存在していて、「ういろう」の入り込める余地がなかったからではないか、というのが現時点での私見。この点については、おいおい考察していくことにしたいと思います。





 「ういろうEXPO」お勧め三河ういろう

 お勧めは、この「餅昌」。年に一度は所要で豊橋を訪れるのですが、必ず買って帰ります。この香りや食感は他にはないもの。朝作られてその日が賞味期限。鮮度に対するこだわりがあって、お店以外では販売されていません。豊橋駅からちょっと遠いのが難ですが、近くに寄られた際は是非、訪問されてこの「ういろう」を味わっていただきたいものです。

 通常は、白と黒の2種類。季節によっては、蓬や栗も登場します(栗はまだ未体験)。



 以上、「ういろうEXPO」作者のお勧め、三河ういろうでした(あくまでも、個人の趣味です)。

2013/09/09
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